どうもガクせんです。
ネグレクト、不登校、いじめ・・・
いろいろな問題が噴出している現代の教育・・・
どうしたらこのような問題を解決していけるのでしょうか。
その答えは「非認知能力」にありました。
今回は、その非認知能力についてフリージャーナリストであるポール・タフさんの著書「私たちは子どもに何ができるのか」をもとに解説していきます。
- 非認知能力とは何かが分かる
- 非認知能力の育て方が分かる
それではまいりましょう!
目次
これからの時代に求められる力とは
時代の変化が激しい現代、社会が求める力と学校が育成している力との間に大きな解離がみられ、教育現場では、不登校、いじめ、学級崩壊、落ちこぼれ、ふきこぼし(授業が簡単すぎてつまらないと感じている子)など様々な問題を生んでいます。
本書では
今の教育手法が確立した1世紀以上前には、経済の側面から見た公立学校の役割は、事務仕事やくり返しの多い機械的な仕事を素早くきちんとこなせる工場労働者を生み出すことだった。
中略
しかし、今、この21世期に労働市場が必要としているのは全く異なったスキルであり、現在の教育システムではこれを伸ばすことはできない。それはたとえば、チームで仕事をする能力、人前でアイデアを提示する能力、効果的な文章を書く能力、深い分析思考をする能力、ある状況で覚えた情報やテクニックを見知らぬ新しい問題や状況に対して応用できる能力などだ。こうしたスキルを伸ばすためには練習が必要なのだが、現状では、ほとんどの学校でその機会が得られない。
「私たちは子どもに何ができるのか」 より
と書かれています。
アメリカの学校について述べられている内容ですが、明治時代にアメリカの教育システムを取り入れた日本の学校でも同じことが言えます。
日本の教育文化の中に根強く残る以下のことなどは、まさに本書に出てくる工場労働者を育成するシステムの名残であると言えます。
- 子どもは、静かに黙って先生の話を聞くという授業スタイル
- 出来合いの答えを学ぶ授業
- 先生が子どもに知識を授けるという縦の関係
- 興味・関心よりも効率性を重視したカリキュラム
- 一方的に課せられる宿題
- 画一的な100点満点の知識偏重型テスト
- 品質チェックシートのような画一的な評価基準
- 決められた時間割
- 決められた席
- 双方向性のない校則
他にも、「移動の際は二列で静かに歩く」「トイレの許可制」など明文化されていないものなど含めると数多くあります。
昔はこれらのことが社会的にも必要であったのであり、誰が悪いということではありません。
これらのことはこれからの時代に求められる力と照らし合わせて見直していく必要があるということなのです。
ボクも教員としてどのようにしたら子どもたちにとって「いい教育」ができるか試行錯誤しながらいろいろ試してきました。
そこで、本書の中で育てるべき力として紹介されているのが「非認知能力」です。
この力を子どもに身に付けさせてあげることが何より大切であると述べられています。
非認知能力って何?
では、非認知能力について解説していきます。
非認知能力とは
- やり抜く力(グリット)
- 立ち直る力(レジリエンス)
- 好奇心
- 探究心
- 自制心
- 楽観的なものの見方
- 誠実さ
- 協働する力
- 自己肯定感
と行ったような点数で測れない力のことです。
逆に計算力、読解力、運動能力など数値化できる能力のことを認知能力と言います。
非認知能力を身に付けるメリットは?
1970年代の基にニュージーランドのダニーデンで生まれた1000人の子どもたちを何十年にもわたり追跡した調査によると、非認知能力の高い子のほうが学歴が高く、健康状態もいいという結果が出ている。また、シングルペアレントになる可能性は低く、借金を抱えたり刑務所に入ったりする可能性も低い。
「私たちは子どもに何ができるのか」 より
このように、非認知能力を身につけた子どもは、学習面、健康面、収入面、人間関係全てにおいて良好であり、俗にいう幸せな人生を歩める可能性が高いと言えます。
本書の中では、貧しい子どもたちが貧困を乗り越えて成功するためにも非認知能力が欠かせないと述べられています。
また、非認知能力が幼少期に育っている子は、学校生活も良好に過ごせるそうです。
東京大学名誉教授の汐見先生も、非認知能力の重要性を述べられており、そのような力が育っている子どもは後伸びして社会的に成功するそうです。
これからの社会、そして子どもたちの幸せな人生のために必要な「非認知能力」
では、どうしたらそのような力を身に付けさせてあげられるのでしょうか。
非認知能力の育て方
さあ、1番気になる非認知能力の育て方!
これがわかれば、教育者として親として大切な力を子どもにプレゼントしてあげることができます。
本書によると
私の至った結論はこうだ「非認知能力は教えることのできるスキル」と考えるよりも「非認知能力は子どもをとりまく環境の産物である」と考えたほうが正確であり、有益でもある。
「私たちは子どもに何ができるのか」 より
ここでいう「環境」とは、物質的なものではなく、大人の関わりのことです。
例えば
ということです。
このような「環境」の中で子どもが育つことにより、非認知能力(やり抜く力、自制心、好奇心、誠実さなど)が育つということです。
では、これらを踏まえて公教育ではどのようなことができるのでしょうか?詳しく考えていきましょう。
これから求められる公教育の役割
オイルショック後、教育は家庭の責任と国から子育てが切り離され、教育への支出が世界的に見ても少ない日本。
そして、1980年代から核家族化が進み、子ども7人に1人が貧困という日本。
そのような状況において、上記のような「環境」をつくるのが難しくなってきていると言えます。
では、教育の最後の砦である公教育はどうでしょうか。
ごく幼い頃の有害なストレスのせいで自制能力がうまく発達しなかった子どもたちは、入園前の教室で何かを要求されるとたいてい感情をあらわにするか、粗野なふるまいをする。そこで教師が対立をうまく扱う訓練、あるいはストレス反応をうまく抑えきれない子どもの爆発に対処する訓練を受けていないと、対立をエスカレートさせてしまう。教室は敵意と怒りに満ちた場所になり、子どもは脅かされていると感じ、教師はストレスで燃え尽きる。そして、お行儀よくふるまうこと自体が、年間を通じて最大の課題になってしまう。
「私たちは子どもに何ができるのか」 より
この一節は本当に今の日本の学校を表しているようで驚きました。
ボクが先生として過ごしてきた12年間、このことをたくさん感じてきました。
何人もの先生が燃え尽き、休職や退職に追い込まれていく姿を見てきました。
自分を押し殺し、お行儀よくふるまうことを強いられ苦しんでいる子どもたちの姿もたくさん見てきました。
それもそのはずです。
学校には、授業スキルをあげるための研修はたくさんありますが、教師が対立をうまく扱う訓練、あるいはストレス反応をうまく抑えきれない子どもの爆発に対処する訓練を受ける機会があまりにも少ないのです。
なので、教員は自分が受けてきた教育経験と今までの工場労働者育成システムの伝承とを駆使するしかないのです。
しかし、もうこのやり方は限界がきています。
学校は、もう一度、本の題名にもなっていますが「私たちは子どもたちに何ができるのか」を考え、子どもの非認知能力を育てるセーフティーネットとしての役割を果たさなければいけません。
非認知能力を育てるために公教育がやるべきこと
教師は生徒たちに深いメッセージを与える。たいていはそれとなく、あるいは無意識に訴えかけるよう、帰属意識やつながり、能力、チャンスについてのメッセージを伝える。
中略
自分たちの成功を信じてくれる大人、思いやりと敬意を込めて関心を向けてくれる大人から正しいメッセージを受け取れば、彼らは教室に欠かさず来るようになり、難しい作業にも粘り強く取り組み、学校生活の中で数えきれないほど起こる小さな挫折や不満からすばやく立ち直れるようになる。
つまり、学校がやるべきことはズバリ!
- 子どもたちを信頼する。
- 思いやりと敬意を込めて関心を向ける。
ということです。
授業が上手いかどうかはその次です。
実際、授業が上手な先生よりも、このような関わりができる先生の方が子どもたちの成績が向上することが本書の中にも書かれていました。
それは、子どもたちの中に非認知能力が育ち、自ら向上する姿勢が生まれるからです。
ボクの経験からもこのことはとてもよくわかります。
漢字が苦手で漢字スキルに取り組むのを嫌がる子がいたのですが、その子がどんなに雑な字を書いてきてもボクは「君ならできる」と信じ、花丸を描き続けました。
そうしたら、その子は「先生、ぼく漢字好きになった」と言って家で毎日漢字スキルをやるようになりました。
ボクは、その子の姿を見て「漢字が書けるようにさせることよりも、信じて任せることの方が何千倍も大切だな」と感じました。
まとめ
上述したように、変化の激しい世の中で「本当に良い教育とは何か」をもう一度考え直す時期にきました。
子どもに関わる皆さんのために、ボクはこれからも有益だと感じた情報を発信していきたいと思います。
みんなで力を合わせ、子どもたちの幸せな人生のために「よい教育」をつくっていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
本当に大切な教育のあり方を見つけ、先生も保護者も子どももみんな幸せな世の中になっていくことを願っています。
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